日本・フィリピン租税条約の改定で何が変わる?在比日本人の二重課税と節税の実務

フィリピン政府が日本など10か国と進める租税条約改定の最新動向を、2026年6月時点の公開情報をもとに解説。在比日本人の年金・副業・現地法人にかかる二重課税の見通しや、TIN取得など今すぐできる準備を、フィリピンビジネスの現場目線でわかりやすくまとめました。

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フィリピン永住権・マニラ在住13年以上 / 移住・ビザ・ビジネスを日本語でサポート

日本・フィリピン租税条約の改定で何が変わる?在比日本人の二重課税と節税の実務

日本・フィリピン租税条約が改定へ — 在比日本人の年金・副業・会社の「二重課税」はどう変わるか

2026年6月時点で進む日本・フィリピン租税条約の改定について、年金や副業、現地法人の二重課税がどう変わるのかを整理し、在比日本人が今から備えるべき実務を解説します。

フィリピン政府が、外国からの投資を呼び込むために、いま10か国と「二重課税を防ぐための取り決め(租税条約)」の交渉を進めています。なかでも日本との条約は先月の改定で署名が済み、10か国のうち最初に動き出す見込みだと報じられました。これは日本とフィリピンの両方に収入がある人、つまり年金を受け取りながらマニラで暮らす方や、日本の仕事を続けながら在比する方、現地で会社を持つ方の税金に関わる話です。本記事は2026年6月17日時点の公開情報をもとにしています。制度の詳しい中身や発効の時期は今後変わりうるので、最後に必ず最新の公式発表をご確認ください。


Part 1: このニュースが、あなたの暮らしにどう関係するか

このニュースの背景と、在比日本人にとっての意味

「二重課税」とは、同じ収入に対して日本とフィリピンの両方で税金がかかってしまう状態のことです。たとえば日本から年金を受け取りながらマニラで暮らす方、日本の会社から報酬をもらい続ける方、フィリピンで稼いだお金を日本にも申告する必要がある方などは、放っておくと二か国で税を取られかねません。これを避けるための国どうしの約束が、租税条約です。

今回のニュースの中心は、フィリピンの財務省(DOF)が10か国と租税条約の交渉を進めていて、そのなかで日本との条約がいちばん早く実施される見込みだという点です。先月のマルコス大統領の訪日のときに、両国は改定版の租税条約に署名しました。財務長官のフレデリック・ゴ氏は、租税条約は外国からの直接投資を呼び込むための大切な道具であり、フィリピンで納めた税金を本国で控除できるので、同じ収入に二重で課税されずに済むと説明しています。

在比日本人にとっての意味は、立場によって少しずつ違います。年金や日本の収入がある方にとっては、税負担の見通しが立てやすくなることが期待されます。フィリピンで会社や個人事業を営む方にとっては、申告や納税の段取りがより整理されることにつながります。ただし条約の細かな運用は専門的で、誰にどのくらいの効果があるかは、その人の収入の種類と金額で変わります。だからこそ、まずは自分が「どの国で、どの収入に、いくら税金を払っているか」を把握しておくことが出発点になります。

私は2025年に、マニラ在住の50代女性のTIN(納税者番号)取得をお手伝いしました。この方は自宅のノートパソコンでUpwork(オンラインで仕事を受けられるサービス)の案件を受けるようになり、報酬の振込にTINが必要になったのです。BIR(内国歳入庁)のオンラインシステム「ORUS」から申請しましたが、入力情報に不備があってそのままでは進めず、それを直すために窓口まで同行しました。窓口では2〜3時間ほどで、特に問題なくすんなり発行されました。租税条約のような大きな制度の話も、結局は「自分の納税者番号があって、どこに何を申告しているか」という足元の準備があってこそ生きてきます。

関連: フィリピン会社設立の第一歩|SEC(証券取引委員会)登録の流れと必要書類をわかりやすく解説 で詳しく解説しています。

要点を整理する

項目内容
何が起きたかフィリピン政府が10か国と租税条約(二重課税を防ぐ取り決め)の交渉を進めていると財務長官が表明しました
交渉中の国日本、シンガポール、香港(再交渉)。ほかにリヒテンシュタイン、カンボジア、ラオス、タイ
ごく初期段階の国マレーシア、ルクセンブルク、韓国
日本との進み具合10か国のうち日本が最初に実施される見込み。先月の大統領訪日で改定版に署名済み
条約のねらい同じ収入への二重課税をなくし、事業コストを下げ、税の見通しを立てやすくすること
もう一つの動き多国籍企業向けの最低税(QDMTT、実効税率15%)の法案。対象は年間連結売上7億5,000万ユーロ以上の大企業グループ
大企業向け税の対象フィリピンで操業する多国籍企業1,100社超のうち、約531社が国際最低税の枠組みの対象
想定スケジュール年内の法案成立をめざし、2027年に制度参加、最初の徴収は2028年の見込み

フィリピン通信社(PNA) — 「PH in talks with 10 countries for double taxation deal」(2026年6月17日)

この表は情報提供を目的に、公開情報の事実をもとに作成したものです。詳細は上記リンクの元記事をご確認ください。


関連: フィリピン会社設立後のBIR登録を放置する危険性|罰金・営業停止を防ぐ手順 で詳しく解説しています。

Part 2: あなたの暮らしへの影響と、現地での動き方

在比日本人としての動き方

租税条約のニュースは大きな話に見えますが、在比日本人がやるべきことは、実は地道な確認と準備です。発効を待つあいだに足元を整えておけば、いざ制度が動いたときにあわてずに済みます。以下の手順で進めてみてください。

まず、自分の収入が「どの国のものか」を書き出します。日本の年金、日本の会社からの報酬、フィリピンでの事業収入、日本の不動産の家賃など、種類ごとに分けて整理しましょう。次に、それぞれを「どの国で、いくら税金を払っているか」を確かめます。ここがあいまいだと、二重課税になっているのかどうかも分かりません。

そのうえで、フィリピン側の納税者番号であるTIN(納税者番号)を持っているかを確認します。持っていなければ、BIR(内国歳入庁)の窓口かオンラインシステムORUSで取得します。会社を営む方は、毎年の申告がきちんと回っているかも見直しておきましょう。最後に、改定条約の発効時期と中身が固まったら、自分のケースで効果が出るかどうかを、税の専門家に一度相談するのが安全です。

手順やることフィリピン特有の注意点
収入の棚卸し日本由来とフィリピン由来の収入を種類ごとに分ける年金・報酬・家賃・事業収入は扱いが異なるため、まとめずに分けて書き出します
納税状況の確認どの国でいくら払っているかを確かめる二重課税の有無は、両国の納税額を並べて初めて見えてきます
TINの確認・取得納税者番号を持っているか確認し、なければ取得する取得費用そのものは基本かかりませんが、ORUSは入力不備で止まりやすく、窓口同行が安心です
申告体制の見直し会社や個人事業の申告が毎年回っているか点検するDTI登録やBIR申告の漏れは後で重い負担になりやすいので、早めに整えます
専門家への相談条約発効の時期と自分への効果を確かめる発効日や運用は変わりうるため、最新の公式発表とあわせて確認します

よくある失敗と対策

ひとつめの失敗は、「ニュースを見て、もう二重課税はなくなったと思い込む」ことです。今回署名されたのは改定版の条約で、実際に効果が出るのは発効してからです。スケジュールも今後ずれる可能性があります。

NG例: ニュースで署名と聞いたので、今年からフィリピンの税金だけ払えばいいと考え、日本側の申告をやめてしまいました。

OK例: 署名と発効は別だと理解し、発効の時期と中身が固まるまで、これまでどおり両国の申告を続けながら最新発表を待ちました。

ふたつめの失敗は、「足元の納税者番号や申告を放置したまま、制度の話だけ追いかける」ことです。租税条約の恩恵は、自分の納税記録がきちんとあって初めて受けられます。番号も申告もないと、控除の手続きそのものができません。

NG例: 条約の細かい条文を一生懸命調べていたのに、自分にはTIN(納税者番号)がなく、フィリピンでの収入の申告もしていませんでした。

OK例: まずTINを取り、フィリピン側の申告を整えてから、条約が自分にどう効くかを専門家に確認しました。

みっつめの失敗は、「会社を立ち上げるとき、税や許認可の段取りを軽く見る」ことです。私は日本で20年ほど美容師をされていた方の、マニラでの美容院開業をお手伝いしました。フィリピン人女性と結婚されていたので、奥様名義の法人と13(a)ビザ(フィリピン人配偶者をもつ外国人のビザ)を組み合わせ、完全に合法な形にしました。初期費用は物件の保証金から内装や機材まで全部で約30万ペソ(おおよそ80万円前後・為替で変動します)でした。DTI(貿易産業省)やMayor's Permit(市の営業許可)、BIR(内国歳入庁)といった許認可は思ったよりすんなり通り、5年経った今は座席2席、スタッフ2〜3人で来客が絶えません。租税条約のような税の話も、こうして最初から合法な土台を作っておくと、後から効果を受け取りやすくなります。

NG例: とりあえず店を開けてから許可を取ろうと考え、登録も申告も後回しにしました。

OK例: 法人とビザの形を先に整え、DTI・市の許可・BIR登録をそろえてから営業を始めました。


Part 3: もっと深く知る

関連する用語・制度

租税条約(DTA、二重課税を防ぐための国どうしの取り決め)は、同じ収入に二か国で税がかかるのを避けるための約束です。フィリピンで納めた税金を本国で控除できるようにすることで、投資や事業をしやすくします。今回、日本との改定版が10か国のなかで最初に実施される見込みだと報じられています。実際の暮らしでは、日本の年金や報酬を受け取りながらマニラで暮らす方にとって、税の見通しが立てやすくなることが期待されます。

QDMTT(適格国内最低トップアップ税、多国籍企業向けの最低税)は、大きな多国籍企業グループが、フィリピンで得た利益に対して少なくとも15%の実効税率で税を納めるようにする仕組みです。対象は年間の連結売上が7億5,000万ユーロ以上の企業グループに限られます。個人や小さなお店には直接関わらない話ですが、フィリピンの税制が国際的な基準に合わせて動いていることを示すニュースとして押さえておくとよいでしょう。

BIR(内国歳入庁、Bureau of Internal Revenue)は、フィリピンの国税を扱う役所です。納税者番号の発行や、個人・法人の確定申告の受付を行っています。私がお手伝いしたTIN取得でも、オンラインのORUSと窓口の両方を使いました。フィリピンで収入を得る人にとって、いちばん基本になる役所です。

TIN(納税者番号、Tax Identification Number)は、フィリピンで税金の手続きをするときに必要になる個人ごとの番号です。仕事の報酬を受け取るときや、各種の登録のときに求められます。オンラインで取れる一方、入力の不備で止まりやすいので、現地に慣れた人と一緒に進めると安心です。

DTI(貿易産業省、Department of Trade and Industry)とMayor's Permit(市の営業許可)は、フィリピンでお店や会社を始めるときに通す代表的な許認可です。私が支援した美容院でも、この二つとBIR登録をそろえてから営業を始めました。思ったよりすんなり通ることもありますが、順番を間違えると後で手間が増えるので、最初に段取りを決めておくのが安全です。


Part 4: よくある質問(FAQ)

今回のニュースで、私の年金にかかる税金はもう変わったのですか?

いいえ、まだ「署名」の段階です。先月の大統領訪日で改定版の条約に署名されましたが、効果が出るのは発効してからになります。発効の時期や中身は今後固まっていくので、これまでどおり日本側の申告を続けながら、最新の公式発表を待つのが安全です。自分の年金がどう扱われるかは、収入の種類や金額で変わるため、発効が近づいたら専門家に確認することをおすすめします。

そもそも二重課税とは、私のような個人にも関係するのですか?

はい、関係しうるテーマです。日本の年金や報酬、日本の不動産の家賃など、日本由来の収入がある方は、放っておくと日本とフィリピンの両方で税がかかる可能性があります。租税条約は、そうした重複を避けるための約束です。まずは自分の収入を国ごとに分けて、どこでいくら税を払っているかを書き出してみると、自分に関わる話かどうかが見えてきます。

フィリピンで税金の手続きをするには、まず何が必要ですか?

フィリピン側の納税者番号であるTIN(納税者番号)が出発点になります。仕事の報酬を受け取るときや各種登録のときに求められます。私が2025年にお手伝いした50代女性は、Upwork(オンラインで仕事を受けられるサービス)の報酬振込にTINが必要になり、BIR(内国歳入庁)のオンラインシステムORUSから申請しました。入力の不備で止まったため窓口に同行しましたが、窓口では2〜3時間ほどですんなり発行されました。

SRRV(特別居住退職者ビザ)で暮らしていますが、税金の面で何か気をつけることは?

SRRV(退職者向けの永住ビザ)そのものは滞在資格の話で、税金の扱いとは別に考える必要があります。私が支援した60代男性は、他の永住ビザより費用が安く、期限のない永住権で、日本に帰っている間も維持される点を理由にSRRVを選びました。年金など日本由来の収入がある方は、租税条約の発効でその扱いが整理される可能性があります。ビザの条件は変わることがあるので、申請や更新のたびにPRA(フィリピン退職庁)で最新を確認してください。

多国籍企業向けの最低税(QDMTT)は、私の小さなお店にも影響しますか?

いいえ、直接の影響はまずありません。QDMTT(適格国内最低トップアップ税)の対象は、年間の連結売上が7億5,000万ユーロ以上の大きな多国籍企業グループに限られます。個人事業や小規模のお店は対象外です。ただ、フィリピンの税制が国際基準に合わせて動いていることの表れなので、今後の制度変更の流れを知る材料として覚えておくとよいでしょう。


活用のコツ(3 Tips)

自分の収入を「日本由来」と「フィリピン由来」に分けて書き出しましょう 租税条約の効果は、収入の種類ごとに変わります。年金、報酬、家賃、事業収入を分けて整理しておくと、自分に関わる部分が見えてきて、発効後の相談もスムーズになります。

発効の時期は公式発表で確かめ、署名のニュースだけで判断しないようにしましょう 署名と発効は別物です。BIR(内国歳入庁)や在フィリピン日本国大使館などの公式情報で、実際にいつ・どう効くのかを確かめてから動くと安心です。

足元の納税者番号と申告を先に整えておきましょう 条約の恩恵は、TIN(納税者番号)があり、申告がきちんと回っていて初めて受けられます。制度の細部を追う前に、まず自分の納税の土台を整えておくことをおすすめします。


ボーナス: マニラ日本人サポートの活用法

租税条約や税金の話は、専門用語が多く、自分にどう関わるか分かりにくいものです。マニラ日本人サポートでは、フィリピン永住権を持ち、自らマニラに移住した日本人が、日本語でこうした相談に対応しています。次のステップとして、たとえば以下のような内容をご相談いただけます。

ひとつめは、TIN(納税者番号)の取得や、BIR(内国歳入庁)の窓口・オンライン申請の同行と通訳です。入力不備で止まりやすい手続きを、最後まで一緒に進めます。

ふたつめは、マニラでの会社や個人事業の立ち上げに関する相談です。法人やビザの形、DTI(貿易産業省)や市の営業許可、BIR登録といった段取りを、合法な土台から整えるお手伝いをします。

みっつめは、SRRV(退職者向けの永住ビザ)など、永住権やビザの取得・更新に関する相談です。年金を受け取りながら暮らす方の生活設計も含めて、現地の事情を踏まえてご案内します。

初回相談は無料です。日本語だけで完結しますので、まずはお気軽にご相談ください。


参考・出典

この記事を書いた人

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運営者 / フィリピン永住権を持つマニラ在住の日本人

  • 東京都出身・生粋の江戸っ子(3代目)
  • フィリピン永住権を取得し自らマニラへ移住(在住13年以上)
  • 移住・ビザ・会社設立・現地生活を実体験
  • 相談から定着まで日本語で一貫サポート

フィリピン永住権を持ち、自分自身がマニラに移り住んだ日本人です。ビザ・住まい・銀行・役所など、はじめての土地でつまずきやすいところを、自分の経験と現地の人脈で一つずつ解きほぐします。記事は「現地で実際にどうなのか」を等身大でお伝えします。ご相談は初回無料・日本語だけで完結します。

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