フィリピンの会社設立で要注意!ダミー禁止法(Anti-Dummy Law)の名義貸しリスクと対策
フィリピン・マニラで会社設立や移住を考える在比日本人向けに、ダミー禁止法(Anti-Dummy Law)の名義貸しリスクと罰則、合法的に事業と生活を築く進め方、ビザの注意点を現地在住者がわかりやすく解説します。

フィリピンの「ダミー禁止法(Anti-Dummy Law)」とは?知っておくべき法的リスク
フィリピンで会社をつくったり、不動産を持ったり、現地でビジネスを始めようと考えたとき、「名義はフィリピン人にしておけば大丈夫」という話を一度は耳にするかもしれません。実はその考え方が、思わぬ法律違反につながることがあります。
今回は「ダミー禁止法(Anti-Dummy Law)」という、在比日本人なら知っておきたい法律について、できるだけわかりやすく整理していきます。この仕組みを理解しておくと、自分の財産や会社を守りながら、安心してフィリピンでの生活やビジネスを進められます。
要約
- フィリピンでは土地や一部の業種で外国人の権利が制限されていて、フィリピン人へ名義を貸す「ダミー」は法律で禁じられています。
- 違反すると5年から15年の懲役や₱5,000以上の罰金、さらには会社の解散といった重い処分の対象になります。
- 名義に頼らず、本当に出資して経営にも加わるフィリピン人パートナーと組み、専門家と手続きを進めれば、合法的に事業を持てます。
名義を借りるだけで罪になる、その怖さ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| よくある発想 | フィリピン人の名義を借りて、自分は実権だけ握る |
| 法律上の扱い | その名義貸しがダミー禁止法で禁止される行為 |
| 落とし穴 | 本人が違法だと気づかないまま進めてしまう |
フィリピンでは、土地の所有や一部の業種について、外国人の権利が法律で制限されています。そのため「フィリピン人の名義を借りて、自分は裏で実権を持てばいい」と考える人が少なくありません。けれども、この名義貸しこそが、ダミー禁止法で禁じられている行為そのものです。
「名義はフィリピン人にしておけば安心」という考えが、ダミー禁止法違反につながることがあります。
困ったことに、本人は違法だと気づいていないケースが多いです。現地の知り合いや業者から「みんなやっているから問題ない」と言われ、そのまま進めてしまう人もいます。後から大きなトラブルになって初めて、自分がリスクを抱えていたと知る場合もあるのです。
関連: フィリピン会社設立は外資100%とフィリピン資本どちらが最適?マニラ移住者が解説 で詳しく解説しています。
なぜフィリピンはここまで厳しいのか
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法律の正式名 | コモンウェルス法第108号(1936年制定) |
| 目的 | 自国の資源や産業をフィリピン人の手で守る |
| 60対40ルール | 多くの業種で資本の60%以上をフィリピン人が保有 |
| 制限の確認方法 | 外国投資ネガティブリストで業種ごとに調べる |
ダミー禁止法は、正式には「コモンウェルス法第108号」という名前で、1936年につくられた歴史ある法律です。背景には、自国の資源や産業をフィリピン人の手で守ろうという強い考え方があります。憲法でも、土地の所有や特定の業種は、基本的にフィリピン国籍の人か、フィリピン資本が一定以上ある会社に限ると定められています。
よく知られているのが「60対40ルール」です。多くの分野では、会社の資本の60%以上をフィリピン人が持っていなければならない決まりになっています。外国人が出資できるのは原則40%までで、どの業種にどんな制限があるかは「外国投資ネガティブリスト」という一覧で確認できます。
こうした制限があるからこそ、形だけフィリピン人を名義人に立てて中身は外国人が支配する、という抜け道を防ぐためにダミー禁止法が存在します。つまりこの法律は、外国人を困らせるためではなく、ルールの公平さを保つためにあるものなのです。
合法的に進めるための具体的なステップ
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ① 業種を確認 | 外国投資ネガティブリストで制限の有無を調べる |
| ② パートナー | 名義だけでなく実際に出資・経営する人と組む |
| ③ 登記・資本金 | SECへ登記。内需向けで外資40%超なら資本金を用意 |
| ④ 専門家へ相談 | 弁護士・会計士に依頼し、書類を合法に整える |
最初にやるべきなのは、自分がやりたい事業がフィリピン人だけに認められた分野かどうかを確認することです。外国投資ネガティブリストを見れば、どの業種に出資制限があるかがわかります。制限のない分野であれば、外国人が100%出資して会社をつくれる場合もあります。
業種の確認から本物のパートナー選び、SEC登記まで、合法に会社をつくる手順を踏むことが大切です。
制限のある業種に関わるときは、名義だけのフィリピン人ではなく、本当に出資して経営にも参加するフィリピン人パートナーと組むことが大切です。形式上の名前だけを借りる関係は、ダミー禁止法に触れる可能性が高くなります。実際にお金を出してもらい、配当を受け取り、経営の意思決定にも加わってもらう必要があるのです。
実際に、日本で20年ほど美容師をしていた方のマニラでの美容院開業をお手伝いしたことがあります。このときはフィリピン人女性と結婚されていたので、妻名義の法人と13(a)ビザ(フィリピン人配偶者を持つ外国人向けのビザ)を組み合わせ、名義貸しに頼らない完全に合法な形に整えました。物件の保証金から内装、機材まで含めた初期費用は全部で約30万ペソ(₱、日本円で概算70万円ほど)で、DTIやMayor's Permit、BIRなどの許認可も思ったよりすんなり通りました。
会社をつくるときは、SEC(証券取引委員会)への登記が必要になります。外国資本が40%を超える内需向けの会社では、一定額以上の資本金(多くの場合、米ドル換算で20万ドル前後)を用意するよう求められるのが一般的です。登記や許認可の手続きには、専門家への依頼料も含めて数万ペソ(₱)ほどかかることが多く、日本円にすると概算でおよそ十数万円前後を見ておくと安心できます。
最後に、弁護士や会計士など現地の専門家に相談することを強くおすすめします。書類のつくり方ひとつで合法にも違法にもなり得るため、自己流で進めるのは避けたほうがよいです。少しの相談料を惜しんだ結果、会社ごと失うリスクを背負うのは、とてももったいないことだと思います。
関連: フィリピンで会社設立する方法|20万ドル規制を合法的に回避する4つの道【マニラ起業】 で詳しく解説しています。
現地で本当によくある失敗パターン
| よくある失敗 | 対処 |
|---|---|
| 「名義貸しでOK」と勧められる | 「現地では普通」を信じず、正式なやり方を確認 |
| 名義人と後でもめる | 最初から名義に頼らない仕組みをつくる |
| 手続きが遅い・高く請求される | 余裕を持ち、複数社で見積もりを取って相場を知る |
| 配偶者・内縁の権利で疑われる | 出資・経営の実態をきちんと記録しておく |
フィリピンで一番多いのが、業者や知り合いから「名義貸しでまったく問題ない」と軽く勧められるパターンです。相手に悪気がなくても、その通りに進めると違法な状態になってしまいます。「現地では普通」という言葉をそのまま信じず、必ず正式なやり方を確認する習慣が身を守ってくれます。
名義人とのもめごとや手続きの遅れも、正式なやり方を選んで備えれば落ち着いて対処できます。
名義を貸してくれたフィリピン人と、後からもめてしまう例も少なくありません。書類上はその人が所有者なので、関係が悪くなったときに「これは自分のものだ」と主張されると、外国人側は法的に弱い立場に立たされます。だからこそ、最初から名義に頼らない仕組みをつくっておくことが、何よりの予防になるのです。
手続きの遅さや、外国人だからと高めの料金を提示される場面にも出くわします。急かしても相手のペースは変わらないことが多いので、時間に余裕を持って動くと気持ちが楽になります。料金についても、複数の事務所から見積もりを取って相場を知っておけば、過剰な請求を避けやすくなるはずです。
私自身も、借りていた部屋を退去したとき、契約では1か月以内に戻るはずの保証金が、実際に返ってきたのは2か月後でした。オーナーは「手渡しするから取りに来てほしい」と言いましたが、「口座に振り込んでください」とお願いしたら、その通りに対応してくれました。慌てず、こちらの希望をはっきり伝えれば、こうしたずれも落ち着いて乗り越えられます。
フィリピン人の配偶者や内縁のパートナーがいる場合も、少し注意が必要です。外国人と生活を共にするフィリピン人が制限分野の権利を持っていると、それだけで疑いの目を向けられることがあります。こうしたときも、誰がお金を出し、誰が実際に経営しているのかをきちんと記録しておけば、いざというとき落ち着いて説明できます。
関連: マカティにAI拠点誕生|在比日本人の働き方と会社設立が変わる理由 で詳しく解説しています。
よくある質問
Q: 名義を借りるだけで、本当に罰せられることがあるのですか?
A: 法律上は、名義を貸した側にも借りた側にも罰則が定められています。ダミー禁止法では、5年から15年の懲役と、₱5,000以上の罰金(権利の価値に応じてさらに高額になることもあります)が科される可能性があります。実際の摘発例はそれほど多くないものの、リスクとして決して小さくないので、軽く考えないほうが安全です。
Q: 外国人がフィリピンで会社の役員になることはできますか?
A: できる場合があります。制限分野の会社でも、外国人が出資できる割合に応じて、取締役として加わることが認められています。ただし業種や役職によって細かいルールが変わるため、事前に専門家へ確認しておくと安心です。
Q: 土地は外国人名義で持てないと聞きました。どうすればいいですか?
A: フィリピンでは原則として、外国人個人が土地を所有することはできません。コンドミニアム(区分所有の建物)なら一定割合まで外国人が持てますし、長期リースという方法もあります。土地そのものにこだわるより、自分の目的に合った合法的な持ち方を選ぶことが大切です。
Q: すでに名義貸しで進めてしまいました。今からでも直せますか?
A: 状況によっては、出資の構成を見直したり、契約をつくり直したりして、合法な形へ整えられることがあります。早く動くほど、選べる選択肢は多くなります。一人で抱え込まず、まずは現地の事情に詳しい専門家へ相談してみてください。
押さえておきたいポイントと次の一歩
ダミー禁止法は、外国人がフィリピン人の名義を借りて、本来制限された権利を手に入れることを禁じる法律です。違反すると、懲役や罰金、会社の解散といった重い結果につながるため、軽く扱うのは危険だといえます。ただし、正しい知識を持って合法的な形を選べば、フィリピンでも安心してビジネスや生活を築いていけます。
大切なのは、「現地ではみんなやっている」という言葉に流されず、自分のケースに合った正規のやり方を確認することです。業種の制限を調べ、本物のパートナーと組み、必要な手続きを専門家と一緒に進めれば、リスクの多くは避けられます。
とはいえ、自分の状況が合法なのか不安に感じる人も多いはずです。マニラ日本人サポートでは、移住やビザ、会社設立に関するご相談を日本語で受け付けています。一人で悩む前に、まずは無料相談で現状を整理してみてください。
参考・出典
- Commonwealth Act No. 108(Anti-Dummy Law 全文/LawPhil): https://lawphil.net/statutes/comacts/ca_108_1936.html
- Anti-Dummy Law(Commonwealth Act No. 108/フィリピン証券取引委員会 SEC): https://www.sec.gov.ph/wp-content/uploads/2020/01/Anti-Dummy-Law-Commonwealth-Act-108.pdf
- Anti-Dummy Law, Commonwealth Act No. 108, as Amended(ADB Law and Policy Reform): https://lpr.adb.org/resource/anti-dummy-law-commonwealth-act-no-108-amended-philippines
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