コワーキングスペース vs 自社オフィス、初期のフィリピン進出にはどちらが良い?費用と柔軟性で考える選び方
フィリピン・マニラ進出の初期にコワーキングスペースと自社オフィスのどちらを選ぶべきかを、費用・柔軟性・信用の3軸で比較します。段階別の目安、会社設立の登記住所の注意点、自社オフィスへ移行するタイミングまで、現地在住13年の日本人が解説します。

フィリピンに進出して会社を立ち上げるとき、最初に迷うのが仕事場所の選び方です。コワーキングスペースやサービスオフィスで身軽に始めるか、最初から自社オフィスを構えるかの二択には、どちらにも利点と落とし穴があり、正解は会社の段階によって変わります。この記事では、マカティに13年住み、進出間もない日本人の立ち上げを数多く見てきた経験から、初期のフィリピン進出における仕事場所の選び方を、費用・柔軟性・信用の3つの軸でわかりやすく整理します。
先に目安:段階別のおすすめ
| 会社の段階 | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| 市場調査〜設立準備(1〜2人) | コワーキング | 契約が軽く、撤退・変更が自由自在です |
| 設立直後〜1年目(2〜5人) | コワーキングまたはサービスオフィス | 固定費を抑えつつ、住所や会議室を確保できます |
| 採用が進んだ段階(5人以上) | 自社オフィス | 1人あたりコストが逆転し、体制も安定します |
大まかに言えば、「人数が少なく、先が読めないうちはコワーキング、人数と事業計画が固まったら自社オフィス」が基本の考え方になります。以下で、それぞれの中身を見ていきましょう。
コワーキングスペースの強みと弱み
コワーキングスペースは、1席単位で月契約できる共有オフィスです。マカティやBGCには国際系・ローカル系の施設が多くあり、料金は1席あたり月₱8,000〜20,000程度が目安になります(施設・プランで変動します)。
強みは、何と言っても身軽さです。内装工事も保証金の重い負担もなく、契約したその週から働き始められます。人数の増減にも席数の変更で対応でき、事業が計画どおりに進まなかった場合の撤退も簡単です。電気・ネット・清掃・警備が料金に含まれ、停電時の発電機を備えた施設が多いのも、フィリピンでは実務的な利点になります。会議室や来客スペースを時間貸しで使えるため、少人数でも体裁が整います。
弱みは、月額が人数に比例して増えることと、自由度の低さです。5人を超えたあたりから自社オフィスの賃料と逆転し始め、営業時間やレイアウト、セキュリティのルールは施設側に従うことになります。電話が多い業種や、機密資料を広げる業務では、共有空間ゆえの気詰まりも出てきます。
関連: マカティでオフィスを借りる!賃貸契約の相場と初期費用の内訳 で詳しく解説しています。
自社オフィスの強みと弱み
自社オフィスの強みは、1人あたりコストの低さ(人数が増えた場合)と、信用・自由度です。取引先や採用候補者に対して「腰を据えて事業をしている」という印象を与えられ、レイアウトも運用も自社で決められます。
弱みは、初期費用と固定化のリスクです。以前の記事でも詳しく解説しましたが、オフィス賃貸は保証金・前家賃などで家賃の5〜7か月分程度が契約時に必要になり、契約期間も2〜3年が一般的です。事業の先行きが読めない段階でこの固定費を抱えると、撤退や縮小の判断が重くなります。加えて、フィリピンの賃貸には当たり外れがあります。私が関わったある賃貸では、入居から1年ほど経った頃、別の内見希望者が管理人とマスターキーで部屋に入ってくることが在室中だけでも5回ほどあり、オーナーに問い詰めても明確な答えがありませんでした。契約書の詰めと、言うべきことを言える体制がないまま長期契約を結ぶのは危険です。
判断を分ける5つのチェックポイント
| チェックポイント | コワーキング向き | 自社オフィス向き |
|---|---|---|
| 人数 | 1〜5人 | 5人以上 |
| 事業の見通し | 検証段階 | 計画が固まっている |
| 来客の頻度 | 少ない・会議室で足りる | 多い・常設スペースが必要 |
| 登記住所 | 住所貸しサービスで対応可か要確認 | 自社契約の住所で登記 |
| 業務の性質 | PCで完結する仕事 | 電話が多い・機密を扱う・設備が要る |
見落とされがちなのが登記住所の問題です。会社設立(SEC登録)には事業所の住所が必要で、コワーキング施設の中には登記用の住所貸し(バーチャルオフィス)サービスを提供しているところもあります。ただし、許認可の種類によっては実態のある事務所を求められる場合があるため、設立手続きを進める前に、自社の業種で住所貸しが通るかを必ず確認してください。
もうひとつ、フィリピンならではの観点がインフラです。自社オフィスを借りる場合、ネット回線の引き込みに数週間かかることがあり、停電時の発電機がどこまでカバーするかもビル次第です。コロナ禍で急に在宅勤務になった方を支援したときは、メイン回線に携帯のテザリングを足す回線の二重化をおすすめしましたが、オフィスでも考え方は同じで、回線と電源の予備をどう確保するかは契約前に確認すべきポイントになります。コワーキングなら、この心配の大半を施設が肩代わりしてくれます。
関連: フィリピン進出は本当にマカティでいい?日系企業が選ぶ理由と会社設立の手順 で詳しく解説しています。
移行のタイミングと進め方
多くの会社にとって現実的なのは、「コワーキングで始めて、条件がそろったら自社オフィスへ移る」という二段構えです。移行を考える目安は、①常時5人以上が出社している、②月額利用料が周辺の賃料+共益費を上回り始めた、③採用や来客で常設スペースの必要性が高まった、の3つがそろったときです。
移行する場合も、コワーキングの契約を1〜2か月残したまま新オフィスの内装・回線工事を進めると、業務を止めずに引っ越せます。自社オフィスの物件探しから契約書の確認までは、以前の記事「マカティでオフィスを借りる」で解説した手順がそのまま使えます。
関連: マニラ経済特区が再解禁へ|PEZA優遇オフィス拡大と在比日本企業のビジネス影響 で詳しく解説しています。
よくある質問
Q: コワーキングの契約に必要なものは何ですか?
A: 施設によりますが、代表者のパスポートなどの身分証と、法人の場合は登記書類の提示を求められるのが一般的です。個人名義で先に契約し、設立後に法人契約へ切り替えられる施設もあります。
Q: 日本人がよく使うエリアはどこですか?
A: 日系企業の多いマカティと、新しいビルが多いBGCが二大候補です。取引先や住まいからの動線で選ぶのが実用的で、雨季の冠水しにくさも意外と重要な判断材料になります。
Q: サービスオフィスとコワーキングはどう違いますか?
A: サービスオフィスは施錠できる個室を借りる形態で、共有デスク中心のコワーキングより料金は上がりますが、機密性と落ち着きが手に入ります。3〜5人での進出初期には、ちょうど中間の選択肢になります。
Q: 最初から自社オフィスにすべき業種はありますか?
A: 許認可で実態のある事務所を求められる業種や、来客・電話対応が業務の中心になる業種は、最初から自社オフィス(または個室型サービスオフィス)を検討したほうがスムーズです。設立前に許認可の要件を確認してから決めましょう。
まとめ:身軽に始めて、固めてから構える
初期のフィリピン進出では、コワーキングで身軽に始め、人数と事業計画が固まってから自社オフィスへ移る二段構えが、費用面でもリスク面でもバランスの良い選び方です。迷ったら、「いま固定費を背負う理由が3つ言えるか」を自問してみてください。言えなければ、まだコワーキングの段階です。
マニラ日本人サポートでは、コワーキングの選定から会社設立の住所要件の確認、自社オフィスの物件探し・契約書チェックまで、進出の段階に合わせて日本語でお手伝いしています。「うちの場合はどちらから始めるべきか」というご相談も歓迎です。お気軽にお問い合わせください。
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