フィリピンで会社設立する方法|20万ドル規制を合法的に回避する4つの道【マニラ起業】
フィリピン・マニラで会社設立を考える移住検討者へ。外国人にかかる20万ドルの資本金規制は、60対40の構成・輸出型・10万ドルへの引き下げ・小売の区別を知れば合法的に回避できます。必要書類や現地の注意点、費用の目安まで実例つきで解説します。

フィリピンで自分の会社を立ち上げようと考えたとき、多くの人が最初にぶつかるのが「外国人は20万ドルもの資本金が必要」という話です。日本円にするとおよそ3,000万円になるため、移住して小さく事業を始めたい人にとっては、いきなり大きな壁に感じられます。ただ、この20万ドルというルールには、知っているかどうかで結果が大きく変わる回避の道がいくつも用意されています。この記事を読めば、その仕組みと現実的な進め方が、ひと通り分かるはずです。
要約
- フィリピンで外国人にかかる20万ドル(約1,100万ペソ前後)の資本金ルールは、すべての業種にかかるわけではなく、会社の構成や売り先しだいで対象から外れます。
- フィリピン人が60%を持つ「60対40」の構成や、売上の60%以上を海外に向ける「輸出型」なら、会社法の最低ライン₱5,000から合法的に設立できます。
- 先進技術・スタートアップ認定・フィリピン人を15人以上雇用のいずれかを満たせば、必要な資本金は10万ドル(約570万ペソ前後)まで下がります。
「20万ドルの壁」で起業をあきらめかけていませんか
| よくある思い込み | 実際のところ |
|---|---|
| 外国人は必ず20万ドルが必要 | 業種や会社の構成しだいで対象から外れる |
| 約1,100万ペソは用意できない | 輸出型や60対40なら₱5,000から始められる |
| 資金がある人だけの世界 | 条件を整えれば少額でも合法的に設立できる |
フィリピンで会社設立を調べ始めると、ほとんどの情報が「外国資本は20万ドルの払込資本が必要」と書いてあります。20万ドルは時期によって変わりますが、おおよそ1,100万ペソ前後(₱11,000,000ほど・為替で変動/日本円で約3,000万円の概算)にあたります。この金額を見た時点で、自分には無理だと感じてしまう人がとても多いです。
フィリピンで会社を立ち上げる際、多くの人が最初に「20万ドルの資本金」という壁にぶつかります
実際には、小さなカフェやコンサル、IT受託のような事業で、いきなり1,100万ペソを用意できる人はそう多くありません。そのため「フィリピン起業は資金がある人だけのもの」と思い込み、計画を止めてしまうケースをよく見かけます。
ところが、この20万ドルは「すべての外国人・すべての業種」にかかるわけではありません。条件を整えれば、もっと少ない資本金で合法的に設立できる道が用意されています。まずは、なぜこのルールがあるのかを知ると、回避の方法も理解しやすくなります。
なぜフィリピンでは20万ドルもの資本金が求められるのか
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠となる法律 | 外国投資法(FIA) |
| 規制の狙い | 地元の小規模事業を守り、外国資本には相応の投資を求める |
| 対象になる会社 | 外国人の持ち分が40%超で、かつ国内市場向け |
| 金額を変える鍵 | 持ち分の構成と、誰に売るか |
この20万ドルというルールは、外国投資法(Foreign Investments Act、略してFIA)という法律に基づいています。狙いは、地元の小さな商売をフィリピン人のために守りつつ、外国資本には「ちゃんとした規模の投資」を求めることにあります。
ポイントは、このルールが「外国人の持ち分が40%を超え、なおかつ国内市場向けに商品やサービスを売る会社」にかかるという点です。つまり、外国人がほぼ100%を持ってフィリピン国内のお客さん相手に商売をする場合に、20万ドルの払込資本が条件になります。
逆に言えば、「持ち分の構成」や「売り先」を変えると、このルールの対象から外れたり、金額が下がったりします。ここが回避を考えるうえでの大事な分かれ道になるわけです。次の章で、その具体的な道を見ていきます。
20万ドル規制を回避する4つの現実的な方法
| 回避の方法 | ポイント | 必要な資本金の目安 |
|---|---|---|
| 60対40の構成 | フィリピン人が株式の60%を持つ | ₱5,000から |
| 輸出型で登録 | 売上の60%以上を海外へ売る | ₱5,000から |
| 10万ドルに引き下げ | 先進技術・スタートアップ認定・15人以上雇用のいずれか | 約570万ペソ(10万ドル) |
| 小売は別ルール | 小売はRA 11595が適用される | ₱2,500万 |
ここからは、実際によく使われる4つの方法を紹介します。どれが自分に合うかは、事業の内容と「誰に売るか」で変わってきます。
構成や売り先しだいで、20万ドルを用意せずに合法的に設立できる道があります
関連: フィリピン会社設立は外資100%とフィリピン資本どちらが最適?マニラ移住者が解説 で詳しく解説しています。
1. フィリピン人と組む「60対40」の構成にする
一番シンプルなのが、フィリピン人が株式の60%、外国人が40%を持つ形にする方法です。この構成なら20万ドルのルールは原則かからず、会社法の最低ライン(払込資本₱5,000以上)を満たせば設立できます。
ただし、信頼できる現地パートナーが本当に必要になります。名義だけ借りて実際は外国人が支配する「ダミー(名義貸し)」は、反ダミー法という別の法律で重い罪になり、罰金や強制送還につながるため、絶対に避けてください。
実際に、日本で20年ほど美容師をされていた方のマニラでの開業を手伝ったことがあります。その方はフィリピン人の奥さんと結婚していたので、奥さん名義で会社を作り、本人は13(a)ビザを持つ形にして、完全に合法なお店にしました。内装や機材まで含めた初期費用は全部で約30万ペソほどで、思っていたよりも身軽に始められた一例です。
関連: フィリピンの会社設立で要注意!ダミー禁止法(Anti-Dummy Law)の名義貸しリスクと対策 で詳しく解説しています。
2. 「輸出型」の会社として登録する
製品やサービスの60%以上を海外に売る「輸出企業」として登録すれば、20万ドルは不要になります。海外向けのIT開発、デザイン受託、BPO、輸出向けの製造などが当てはまりやすい分野です。
この場合も、会社法上の最低資本(₱5,000)で設立できます。日本のお客さんや海外企業を相手に仕事をする予定の人にとっては、もっとも現実的な選択肢の一つになります。
関連: マニラ最低賃金₱85引き上げ解説|在フィリピン日本企業の人件費対策 で詳しく解説しています。
3. 条件を満たして「10万ドル」に下げる
外国人が40%超を持ち、国内市場向けに事業をしたい場合でも、次のどれか一つを満たせば10万ドル(おおよそ570万ペソ前後・₱5,700,000ほど/日本円で約1,500万円の概算)まで下げられます。
- 科学技術省(DOST)が認める「先進技術」を使う事業であること
- スタートアップ法(Innovative Startup Act)の認定を受けること
- フィリピン人を15人以上、直接雇用すること(以前は50人でしたが、近年15人に緩和されました)
特に「15人以上の雇用」は、人を多く使う飲食や小規模工場などで現実的に狙える条件です。雇用を生む計画があるなら、最初から10万ドル枠を前提に設計するとよいでしょう。
4. 「小売」は別ルールだと知っておく
消費者に直接モノを売る小売業は、上の話とは別の法律(RA 11595)で動いていて、払込資本₱2,500万が基準になります。自分の事業が「小売」なのか「卸(業者向け販売)」なのかで条件が大きく変わります。
ここを取り違えると、登録時にSECから差し戻されたり、後で問題になったりします。最初の業種分類を正しく決めることが、遠回りを防ぐ近道になります。
設立の進め方と必要書類
回避の道が決まったら、SEC(証券取引委員会)への登録に進みます。準備する主な書類は、定款、財務担当者の宣誓供述書(Treasurer's Affidavit)、外国から資金を入れる場合の送金証明(inward remittance)、そして10万ドル枠を使うならDOSTやDOLEなどの推薦状です。
払込資本は紙の上の数字ではなく、実際に銀行口座へ入れて証明します。事業の分類によっては₱5,000で足りる一方、10万ドル枠なら約570万ペソを用意する形になり、ここで必要額が大きく変わってきます。書類の整え方一つで設立できるかどうかが決まるため、最初の設計がとても大切です。
こうした口座づくりも、慣れないと意外に手間取ります。2024年に、マニラ在住の60代の男性が大手のBDOで口座を開くのをお手伝いしたときは、賃貸契約書やパスポート、公共料金の証明などをそろえ、事前にオンラインで予約しておいたおかげで、当日の待ち時間はほとんどありませんでした。ただ、月末に残高が1,000ペソを下回ると維持費が引かれるなど、現地ならではの細かい注意点もあります。
現地で実際に起きること、よくある失敗と対処法
| 起きること | 対処法 |
|---|---|
| 役所の処理が予定どおりに進まない | スケジュールに最初から余裕を持たせる |
| 仲介業者から相場より高い手数料を請求される | 複数から見積もりを取り、内訳を文書でもらう |
| 書類の小さな不備で差し戻される | 業種分類と書類を経験者に確認してもらう |
| 回線や連絡が遅い | 「そういうもの」と構え、専門家と設計を固める |
ルールを理解しても、実際の手続きでは「フィリピンらしさ」に何度か出くわします。あらかじめ知っておけば、慌てずに対応できます。
役所の遅れや書類の差し戻しは、余裕を持った段取りと事前確認で乗り越えられます
まず、役所の処理が予定どおりに進まないことがよくあります。登録は一般に1〜3か月ほどですが、書類の追加を求められて伸びる場合も珍しくありません。対策は単純で、スケジュールに最初から余裕を持たせておくことです。
次に、一部の仲介業者が相場より高い手数料を請求してくる場面があります。一社だけの見積もりで決めず、複数から見積もりを取って比べると、過大な請求を避けやすくなります。料金の内訳を文書でもらうことも忘れないでください。
さらに、書類の小さな不備で差し戻されることもよく起きます。スペルや金額の食い違い、業種分類のミスが代表例です。最初の分類と書類チェックを経験者に確認してもらうだけで、やり直しの回数はぐっと減らせます。
回線や連絡の遅さに戸惑うこともありますが、これも「そういうもの」と構えておけば大丈夫です。焦らず、余裕を持ち、最初の設計を専門家と固めておくこと。これさえ押さえれば、現地の不確実さは十分に乗り越えられます。
よくある質問
Q: フィリピン人に名義を借りれば、20万ドルを回避できますか
A: その方法は反ダミー法に違反する違法行為で、絶対におすすめできません。発覚すると罰金や実刑、外国人の場合は強制送還のリスクがあります。合法的な60対40の構成と、名義貸しはまったくの別物だと考えてください。
Q: 20万ドルは、一度払ったら戻ってこないお金ですか
A: いいえ、それは事業のための資本金なので、設備や運転資金など会社の活動に使えます。死んでしまうお金ではありません。ただし、将来利益を海外へ送金するときのために、外国から入れた送金の記録は必ず残しておくことが大切です。
Q: いちばん費用を抑えられるのはどの方法ですか
A: 事業内容にもよりますが、海外向けに売るなら「輸出型」、国内向けなら「60対40」が、資本金を最も低く抑えやすい道です。どちらも会社法の最低ライン(₱5,000)で設立できます。自分の売り先がどこかを基準に選ぶと、判断しやすくなります。
Q: 資本金はペソと円のどちらで用意すべきですか
A: 外国からの投資は「送金したときと同じ通貨」で記録され、利益の送金も同じ通貨で行うのが原則です。そのため、ドルで送って記録を残す形が一般的になります。どの通貨でいくら入れるかは、後の送金にも関わるので、最初に決めておくと安心です。
まとめ:自分に合った道を選べば、20万ドルは怖くありません
20万ドル(約1,100万ペソ前後・日本円で約3,000万円の概算)という数字だけを見ると、フィリピン起業はとても遠いものに感じられます。けれど実際には、60対40の構成、輸出型での登録、10万ドルへの引き下げ条件、小売との区別を知っているだけで、必要な資本金は大きく変わってきます。
大事なのは、自分の事業が「誰に売るのか」「どんな構成にするのか」を最初に正しく決めることです。ここを間違えなければ、無理のない金額で合法的にスタートできます。あとは、信頼できる相手と書類を丁寧に整えていくだけです。
とはいえ、自分の事業がどの道に当てはまるのかは、業種や雇用計画によって細かく変わります。マニラ日本人サポートでは、永住権を持ち現地で実際に会社を作ってきた立場から、あなたの事業に合った最適な進め方を一緒に整理できます。まずは無料相談で、自分のケースならいくら必要になるのかを気軽に確かめてみてください。
参考・出典
- フィリピン外国投資法(RA 7042/RA 11647改正)解説(在ドイツ・フィリピン大使館): https://philippine-embassy.de/foreign-investment-act-of-1991-r-a-no-7042/
- フィリピンの外国投資法の最近の改正点(Alliott Global Alliance): https://www.alliottglobal.com/insights/recent-revisions-in-foreign-investment-laws-in-the-philippines/
- 20万ドルの資本金ルールと外資系国内法人の設立(NDV Law): https://ndvlaw.com/the-usd-200000-capitalization-rule-setting-up-a-foreign-owned-domestic-corporation-the-right-way/
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