フィリピン会社設立後の給与計算|SSS・PhilHealth・Pag-IBIGの金額と納付手続き

フィリピンで会社設立し現地スタッフを雇う日本人向けに、給与計算で必須のSSS・PhilHealth・Pag-IBIGを解説。雇用主登録の書類、天引き額の目安(ペソ表記)、納付期限、マニラ移住者がつまずきやすい失敗と対策までまとめました。

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フィリピン永住権・マニラ在住13年以上 / 移住・ビザ・ビジネスを日本語でサポート

フィリピン会社設立後の給与計算|SSS・PhilHealth・Pag-IBIGの金額と納付手続き

フィリピンの給与計算で必須の「SSS・PhilHealth・Pag-IBIG」って何?

フィリピンで会社を作り、いざ現地スタッフを雇うと、最初の給料日の前に必ずぶつかる壁があります。それが SSS・PhilHealth・Pag-IBIG という3つの強制加入制度です。名前は聞いたことがあっても、「誰がいくら払うのか」「いつまでに納めるのか」までは、日本語の情報だけではなかなか見えてきません。

在比日本人の間でも、この3つを後回しにして、あとから延滞金を請求されたという話をよく耳にします。逆に言えば、仕組みさえ最初に押さえておけば、毎月の給与計算は驚くほど淡々と回るようになるのです。

この記事では、マニラで会社設立や雇用まわりの手続きを日本人のお客様と一緒に進めてきた立場から、3つの制度の正体、金額の考え方、納付の段取り、そして現場で本当に起きるトラブルとその防ぎ方までをまとめます。読み終わるころには、「うちの会社は毎月どこに、いくら、いつ払えばいいのか」 が自分の言葉で説明できる状態になっているはずです。

要約

  • SSSは年金と傷病手当、PhilHealthは医療費の補助、Pag-IBIGは住宅ローンと強制貯蓄をそれぞれ担当し、天引き分に加えて会社側の負担分も毎月発生します
  • 実務は「雇用主登録 → 従業員の番号確認 → 毎月の計算 → 期限内の納付」の4段階で回り、Pag-IBIGは従業員₱200・会社₱200に落ち着くことが多い一方、SSSとPhilHealthは給与に応じて変わります。
  • ポータルの不調や窓口の対応差は前提として、締め切りの3〜5営業日前に納付を終える と決めておけば、延滞金や未納のトラブルはほぼ防げます。

「3つの頭文字」が突然出てきて手が止まる

つまずくポイント実際に起きること
3機関が別々に動くログイン先も締め切りも管理先もバラバラになる
料率・上限が改定される古い計算表を使い回して天引き額が不足する
後回しにしてしまう1か月の遅れでも延滞金がつく

フィリピンで従業員を1人でも雇うと、給与から天引きしなければならない項目がいきなり増えます。日本の社会保険と健康保険と年金にあたるものが、それぞれ別の役所・別の番号・別の納付期限 で走っているからです。

多くの人がつまずくのは、金額そのものよりも「対応の分散」にあります。SSSはSSSのポータル、PhilHealthはPhilHealthのポータル、Pag-IBIGはPag-IBIGのポータルと、ログインする場所も締め切りも別々に管理しなければなりません。

さらに厄介なのが、料率や上限額が数年おきに改定される という点でしょう。去年のエクセルをそのまま使い回した結果、天引き額が足りず、あとから会社が差額と延滞金をかぶるケースは本当に多いです。

「とりあえず給料は払った、保険はあとで整えよう」と考える気持ちはよく分かります。ただしこの3つは、支払いが1か月遅れただけでもペナルティが発生する種類のものなので、後回しにするほど痛くなります。

関連: フィリピン 現地採用の進め方|マニラで会社設立後に使える求人サイトと面接のコツ で詳しく解説しています。

なぜフィリピンでは3つに分かれているのか

制度主な役割日本で近いもの
SSS年金・傷病手当・出産手当厚生年金
PhilHealth入院や手術の費用補助公的医療保険
Pag-IBIG住宅ローンと強制貯蓄直接の対応物なし

フィリピンの社会保障は、目的ごとに独立した機関が運営する という設計になっています。年金と傷病手当はSSS、医療費の補助はPhilHealth、住宅ローンと貯蓄はPag-IBIGと、役割がはっきり分かれているのです。

SSS・PhilHealth・Pag-IBIGの3制度の役割を並べて比べる図 年金・医療・住宅と、目的ごとに別々の機関が運営されています

日本のように「社会保険料」として一本化されていないのは、それぞれの制度が別々の法律で、別々の時期に生まれてきた歴史があるためです。統合の議論は昔からありますが、いまのところ実務は3本立てのまま動いています。

それぞれの制度を、ざっくり日本の感覚に置き換えると理解しやすくなります。

  • SSS(Social Security System):民間企業で働く人の年金・傷病手当・出産手当などをカバーする、日本の厚生年金に近い制度
  • PhilHealth(Philippine Health Insurance Corporation):入院や手術の費用を一部負担してくれる、公的な医療保険
  • Pag-IBIG(HDMF):住宅取得のためのローンと強制貯蓄を兼ねた制度で、日本には直接の対応物がない仕組み

そしてこの3つには、「雇用主も同額前後を負担する」 という共通点があります。従業員から天引きした分だけを納めればよいわけではなく、会社側の負担分を上乗せして送金する必要があるので、人件費を見積もる段階からこの上乗せ分を計算に入れておきましょう。

もう一点、外国人経営者が見落としがちなのが登録の順番です。会社としての雇用主番号(Employer ID)を各機関で取得してからでないと、そもそも従業員の分を納付できません。

登録から毎月の納付まで、実際の段取り

ステップやること押さえどころ
13機関で雇用主登録雇用主番号がないと納付できない
2従業員の3つの番号を確認入社時に控えを保管する
3毎月の天引き額を計算最新の料率表で確認する
4ポータルで明細作成と納付給与日と納付日をセットで管理

ここからは、実際に手を動かす順番で説明していきます。金額はペソ(₱)表記で、円換算はあくまで概算として添えます。

雇用主登録に必要な書類とノートパソコンを机に広げた様子 雇用主登録から毎月の納付まで、順番どおりに進めれば迷いません

関連: フィリピンの13ヶ月目給与とは?会社設立後に必要な支払い義務と計算方法を解説 で詳しく解説しています。

1. 会社として雇用主登録を済ませる

SECまたはDTIでの会社登録、市役所のビジネスパーミット、BIR(内国歳入庁)の登録が終わったら、その書類一式を持って3機関それぞれに雇用主登録をおこないます。必要になる書類は、おおむね共通です。

  • SEC登録証(またはDTI証明書)と定款
  • 市役所発行のビジネスパーミット
  • BIR Form 2303(税務登録証)
  • 各機関所定の雇用主登録フォーム(SSS R-1、PhilHealth ER1、Pag-IBIG EDF)
  • 代表者のIDおよび署名見本

登録が完了すると、雇用主番号(Employer Number) が発行されます。この番号がなければ従業員の加入手続きも納付もできないため、スタッフの入社日から逆算して早めに動くのが安全です。

以前、日本で20年ほど美容師をされていた方のマニラでの美容院開業をお手伝いしたことがあります。フィリピン人女性と結婚された方で、奥様名義の法人と13(a)ビザという完全に合法な形を整え、DTI、Mayor's Permit、BIRといった許認可を順に取っていきました。身構えていたわりに手続きはすんなり通り、若いスタッフもすぐ見つかりました。開業から5年経った今も、座席2つ・スタッフ2〜3人で来客が絶えず、人を雇う前提の登録をきちんと済ませておいたことが、その後の運営を軽くしています。

関連: マニラ最低賃金₱85引き上げ解説|在フィリピン日本企業の人件費対策 で詳しく解説しています。

2. 従業員それぞれの番号を確認する

フィリピン人の多くは、前職や学生時代にすでに3つとも番号を持っています。入社時に SSS番号・PhilHealth番号・Pag-IBIG MID番号 を提出してもらい、控えを人事ファイルに保管しておきましょう。

番号を持っていない新卒などには、本人に取得してもらう必要があります。ここを曖昧にしたまま初回の給与計算に入ると、納付データが弾かれて締め切りに間に合いません。

3. 毎月の天引き額を計算する

金額の考え方は、制度ごとにまったく違います。おおよその目安は次のとおりです(料率と上限は改定されるので、必ず最新の通達で確認してください)。

  • SSS:月額基準給与(MSC)に応じた表があり、拠出率は15%前後です。このうち従業員が約3分の1、会社が約3分の2を負担します。上限のMSCに達している人でも、従業員負担はおおむね₱1,750前後、会社負担は₱3,500前後に収まります(概算で日本円にすると、それぞれ約4,500円・約9,000円ほどです)。
  • PhilHealth:給与に対して5%程度の定率で、会社と従業員が半分ずつ負担します。給与が高い人ほど増えますが、上限が設けられているため、青天井にはなりません。
  • Pag-IBIG:金額が最も小さく、多くの企業で 従業員₱200・会社₱200 に落ち着きます(合計で概算約1,000円ほどです)。

計算に使うのは、残業代や手当を含む前の基本給ベースが基本になります。ここを取り違えると全員分がずれるので、最初の1回だけは慎重に確認しておきたいところです。

4. 納付と報告をおこなう

納付は各機関のオンラインポータル(SSSのMy.SSS、PhilHealthのEPRS、Pag-IBIGのVirtual Pag-IBIG)で明細を作成し、銀行またはGCashなどの提携チャネルで支払う という流れになります。

締め切りは制度ごとに異なり、雇用主番号の末尾で日付が変わる場合もあります。支払いが1日でも遅れると延滞金が加算される ため、給与支払日と納付日をセットでカレンダーに入れておくのが確実です。

支払いの受け皿として、法人でも個人でも、現地の銀行口座は早めに用意しておきたいところです。2024年にマニラ在住の60代男性の口座開設をお手伝いしたときは、大手のBDOで普通預金(Peso Savings)を開き、賃貸契約書・パスポート・公共料金の証明書を持参しました。オンラインで予約しておいたので当日の待ち時間はほとんどなく、通帳はその日に受け取れましたが、VISAデビット付きのカードは発行に1週間ほどかかりました。月末に残高が₱1,000を下回ると口座維持費として数百ペソ引かれるので、納付用の資金は少し余裕を持たせて置いておきましょう。

現地で本当に起きること、そのときどうするか

よくある出来事こうすれば大丈夫
ポータルが締切前に落ちる3〜5営業日前に明細作成と支払いを終える
番号の重複・スペル違い入社時にIDのコピーと本人確認をそろえる
窓口で言うことが変わる担当者名と日付を控え、書類は1部多く持参
代行業者の過剰請求作業ごとの内訳見積もりを必ず出させる
未納の放置遅れたら隠さず各機関に相談する

まず覚悟しておきたいのが、オンラインポータルがよく落ちる という現実です。締め切り直前の数日はアクセスが集中し、画面が真っ白になったり、ログインできなくなったりします。

マニラの役所の窓口で書類を手に順番を待つ人たち 窓口の対応差やポータルの不調は、前倒しの行動でほとんど吸収できます

対処はシンプルで、締め切りの3〜5営業日前には明細作成と支払いを終わらせる と決めてしまうことです。前倒しを習慣にするだけで、この問題のほとんどは消えます。

私自身、自宅の通信は光回線をメインに、Globeの携帯回線のテザリングをサブにした二重化にしています。台風で片方の基地局が落ちても、もう一方で粘れたことが何度もありました。納付の期限が迫っているときに回線が切れると本当に困るので、回線を二重にしておく のは、フィリピンで事務仕事をする人の必須の備えだと思っています。

次に多いのが、番号の重複や記載ミスです。従業員が過去に2つ番号を作ってしまっていたり、名前のスペルが書類ごとに違っていたりして、納付データが通らないことがあります。入社時にIDのコピーと本人確認をそろえておけば、後からの照合作業がぐっと楽になります。

役所のオンラインシステムそのものが素直に動かないこともあります。2025年に、マニラ在住の50代女性のTIN(納税者番号)取得をお手伝いしました。自宅のノートパソコンでUpworkの仕事を受けるようになり、報酬の振込にTINが必要になったためです。BIRのオンラインシステム(ORUS)から申請したものの、入力情報の不備でそのまま先へ進めず、結局は窓口まで同行することになりました。窓口では2〜3時間ほどで問題なく発行され、オンラインで詰まったら早めに窓口へ切り替える ほうが結果的に速い、と改めて感じた一件です。

窓口対応も、日本の感覚とは少し違います。担当者によって言うことが変わったり、「明日また来て」と言われたりするのは珍しくありません。担当者の名前と日付を必ずメモし、書類は常に1部多くコピーを持参する ようにすれば、二度手間の多くは防げます。

料金面では、手続き代行を名乗る業者から相場より高い金額を提示される場合があります。3機関の登録も月々の納付も、本来は会社が自分でできる手続きなので、見積もりを取るときは必ず「何の作業にいくらか」の内訳を出してもらってください。内訳を出せない相手とは、契約しないほうが安全でしょう。

最後に、いちばん痛いのが未納の放置です。数か月分をまとめて後払いしようとすると延滞金が積み上がり、従業員が医療費の補助を受けられないという実害にもつながります。もし遅れてしまった場合は、隠さずに各機関へ相談すれば分割や調整に応じてもらえることもあるので、早めに動きましょう。

よく来る質問

Q: 外国人である私自身(社長)も加入しなければいけませんか?

A: フィリピン法人から給与を受け取る役員や従業員であれば、外国人でも原則としてSSSとPhilHealthの対象になります。9G(就労ビザ)で働いている日本人は加入が必要になるケースがほとんど ですので、自分は対象外だと決めつけないでください。Pag-IBIGについては任意扱いとなる場合があり、状況によって判断が分かれます。

Q: 従業員が1人だけでも登録は必要ですか?

A: 必要です。従業員が1人でも、雇用主としての登録義務と納付義務が発生します。人数が少ないうちに仕組みを作っておいたほうが、あとから増えたときに慌てずに済みます。

Q: 天引きを忘れてしまった月があります。どうすればいいですか?

A: 会社が立て替えて納付し、翌月以降に本人と相談しながら精算するのが一般的です。従業員の同意なく複数月分を一度にまとめて天引きするのは、労務上のトラブルのもと になりますから、必ず事前に説明して合意を取りましょう。

Q: 会計事務所に任せれば、自分は何も知らなくて大丈夫ですか?

A: 実務を任せること自体はまったく問題ありませんし、多くの会社がそうしています。ただし、納付が実際に完了しているかを毎月の控えで確認する 習慣だけは、経営者本人が持っておくべきです。「任せていたのに納めていなかった」という事例は、残念ながら実際にあります。

Q: 料率や上限額はどこで確認できますか?

A: それぞれの機関が公式サイトで通達(Circular)を出しており、改定があるときはそこで告知されます。年に一度は最新の拠出表を確認し、給与計算用のエクセルやソフトを必ず更新してください

まとめ

SSS・PhilHealth・Pag-IBIGは、フィリピンで人を雇う以上、避けて通れない3点セットです。年金はSSS、医療はPhilHealth、住宅と貯蓄はPag-IBIGという役割分担を押さえ、会社側にも負担が発生する ことを人件費の見積もりに入れておきましょう。

実務の流れは、雇用主登録、従業員の番号確認、毎月の計算、期限内の納付という4段階です。ポータルの不調や窓口の対応差はあらかじめ織り込み、締め切りより数日早く動く ことを社内のルールにしてしまえば、大きな失敗はほぼ起きません。

とはいえ、最初の登録や初回の給与計算は、慣れないうちはどうしても不安が残るものです。マニラ日本人サポートでは、会社設立からスタッフの雇用、役所での手続きまわりまで、日本語で相談を受けています。「うちの場合はどう進めればいいのか」を具体的に整理したいときは、無料相談から気軽に声をかけてください

参考・出典

この記事を書いた人

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運営者 / フィリピン永住権を持つマニラ在住の日本人

  • 東京都出身・生粋の江戸っ子(3代目)
  • フィリピン永住権を取得し自らマニラへ移住(在住13年以上)
  • 移住・ビザ・会社設立・現地生活を実体験
  • 相談から定着まで日本語で一貫サポート

フィリピン永住権を持ち、自分自身がマニラに移り住んだ日本人です。ビザ・住まい・銀行・役所など、はじめての土地でつまずきやすいところを、自分の経験と現地の人脈で一つずつ解きほぐします。記事は「現地で実際にどうなのか」を等身大でお伝えします。ご相談は初回無料・日本語だけで完結します。

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